戦後すぐに創業した佐賀の老舗ちゃんぽん店
佐賀の武雄を発祥の地とし、九州各地に展開する「井手ちゃんぽん」。
その1号店であり本店は、戦後すぐに創業した老舗だ。
武雄温泉から東へ、国道34号線沿いにある、井手ちゃんぽん本店。
特徴ある形の看板で、すぐに分かる。
何とも言えないレトロスタイル、かつヴィヴィッドな看板が気になる。
瓦屋根が印象的な、日本家屋スタイルの店舗だ。
「名代 井手ちゃんぽん」。
ここが井手ちゃんぽんの本店である。
定食屋から始まり、炭鉱夫に愛され、やがて井手ちゃんぽんと呼ばれた
井手ちゃんぽんの創業者である井手精市郎氏は、戦前に大阪にて丼物を提供する定食屋で働いていたが、戦争を機に佐賀に疎開。
戦争が終わり、1949年にこの地で定食屋「千十里食堂」を創業した。
千十里食堂は丼物からかき氷まで様々なものを提供していたが、その中で提供していたちゃんぽんが、当時炭鉱で働く人たちの間で人気となった。
このちゃんぽんは、井手氏が長崎で食べたちゃんぽんをアレンジし、野菜をたっぷりと入れたボリューミーなもの。
お店もいつしか「井手ちゃんぽん」と呼ばれるようになった。
そして1980年、井手精市郎氏の息子である井手日出男氏に二代目店主を任せる時、店名を「井手ちゃんぽん」に変更した。
創業から半世紀以上の老舗、井手ちゃんぽん。
九州北部を中心にフランチャイズ展開されている。
フランチャイズの運営会社はヒューマン社、九州オレンジゴルフ社らが行い、2021年4月現在、本店合わせて合計12店舗で運営されている。
また、井手日出男氏の姉による、「伊万里ちゃんぽん」という暖簾分けもある。
店内は左右方向に広く、奥には座敷席まである。
広めの厨房と、長いカウンター席が特徴だ。
井手日出男氏の写真が飾られている。
お品書きもレトロなデザインだ。
今回はの「特製チャンポン」をオーダー!
ノーマルとの違いは、キクラゲと玉子がトッピングされている点だ。
井手ちゃんぽんの丼ものメニューには、大阪で丼ものを作っていた井手精市郎氏の味が引き継がれているという。
井手ちゃんぽんの歴史も掲示されている。
テーブルの上にはソース、ラー油、七味、コショウなどがスタンバイ。
野菜で麺が見えない爆裂ボリューム!そして濃厚なスープ
運ばれてきた「特製チャンポン」!
器の大きさ、そしてドッサリと盛られた野菜類の迫力に圧倒される。
山のような野菜の高さ、お分かりいただけるだろうか。
麺が全く見えない。
これは一体、何なのだ?
特製チャンポンの特徴であるキクラゲが、これでもか!と盛られている。
そしてTCP48(特製ちゃんぽん48)センターの座を射止めたのは、生卵だ。
井手ちゃんぽんは長崎ちゃんぽんからインスパイアを受けたものだが、長崎ちゃんぽんとの最大の違いは、エビなどの海鮮系の具材の代わりに蒲鉾などの練り物が入っていること。
これにより海鮮物の醸し出す味が無いかわり、スープがより濃厚な味わいと感じるのだという。
とんこつベースのスープは、ひたすら濃厚だ。
それにしても、もの凄い野菜の量。
食べて食べて食べて、やっと麺が現れる。
麺は太麺だが柔らかく、食べやすい。
地元武雄の古川製麺所製の麺とのこと。
濃厚で少し甘めなスープと、きくらげ、もやし、キャベツ、玉ねぎなどの野菜。
そこに生卵がマイルドさを足してくれる。
それらがごく自然な感じで、胃の中にスルスルと消えていく。
ちゃんぽんで、これほど満足感を得たことは過去にない。
奇跡のようなちゃんぽんだ。
完食した頃には満腹となり、これ以上ない満足感を得ることができた。
なんと、「麺抜き」というオーダーも可能だとか。(隣の人がそういうオーダーをしていた)
井手ちゃんぽん 本店。
佐賀生まれの、濃厚ちゃんぽん。
各地にあるフランチャイズ店も、それぞれ個性を持っているのだという。
この本店にあるのは、創業からの長い歴史と、守られ続ける伝統の味。
炭鉱夫に愛された井手ちゃんぽんは、今でもガッツリとしたスタミナ源になってくれた。