びっくりドンキーの知られざるルーツ店
「びっくりドンキー」の1号店は札幌にある西野店だが、実はびっくりドンキーにはルーツとなるお店がある。
それは、盛岡にある小さなハンバーグレストランである「ベル」というお店だ。
盛岡駅から大通商店街をひたすら歩いていくと、岩のようなゴツゴツとした外壁を持つ異様な雰囲気の建物が出現する。
「ベル」とだけ書かれた看板が、その存在感に拍車をかけている。
ハンバーグレストラン ベル 大通店。
ここがびっくりドンキーのルーツとなっている店だ。
ベル 大通店の営業時間は10時から0時までとなっている。
びっくりドンキーのような木枠のメニュー表が掲示されているが、その下には…
”べる”がびっくりドンキーの
1号店なのです
ここがびっくりドンキーの1号店であると示されたプレートが掲げられている。
厳密にはびっくりドンキーの1号店は札幌にある西野店であり、べるはびっくりドンキーになる前に「ハンバーガーとサラダの店 べる」として1968年に盛岡市の日の出会館にて創業されたお店だ。
この大通店は1972年6月に誕生した店舗で、べるの1号店ではないが、「ハンバーグレストラン」と名乗り始めた店舗としてはここが1号店となる。
ちなみに裏側は普通である。
盛岡で始まった「べる」の歴史
ベルは、1968年12月に盛岡に誕生したハンバーガーとサラダのお店で、当初はひらがなの「べる」という名で営業を行っていた。
なぜ「べる」という名前になったかは、創業者である故・庄司昭夫社長が打楽器の「カウベル」をイメージして命名したのだという。庄司氏は一時期、プロのミュージシャンを目指していたのだとか。
創業当時13坪の小さなお店だったべるには、「小さな店であることを恥じることはないよ。その小さなあなたの店に人の心の美しさを一杯に満たそうよ」というフィロソフィが掲げられていた。
その小さなあなたの店に人の心の美しさを一杯に満たそうよ
当時、盛岡の日の出会館にあったべるの1号店は13坪しかなかった。
そんな小さな店に掲げられていた言葉がこれだ。
現在、この言葉は全てのびっくりドンキーに掲げられている。
べるは試行錯誤を繰り返しながら主力メニューをハンバーガーからハンバーグへと変え、盛岡市内を中心にべるの店舗をチェーン展開していく。
そしていよいよ「びっくりドンキー」(当初の店名は「ドナルドダック」)として札幌に1号店である西野店をオープンさせることになるが、びっくりドンキーとして全国展開を広げた今でもベルの大通店だけ1店舗がここに存在しているのだ。
中身は完全に「びっくりドンキー」
入店して席に通され、グランドメニューを見ると、それはびっくりドンキーのものである。
この観音開きこそびっくりドンキーのメニュー表だ。
でかい!
本日はびっくりドンキー伝統の看板メニュー「チーズバーグディッシュ」150gをオーダー!
オーダーしたらチャイムを押そう。
あれっ、びっくりドンキーのものと同じだ!
しばらく待っている間に、ベル 大通店の店内探訪をしよう。
和室もある、ベルだけの独特な内装
ベル大通店は2階にもフロアがある。
どこか古い洋館のような雰囲気のある内装は、他のびっくりドンキーにはないものだ。
そして何と言ってもベル大通店最大の特徴は、和室の座敷席があることだ。
座布団の上に座って食べる、びっくりドンキーのハンバーグ。
こんなことができるのも、ベル 大通店だけである。
掛け軸を眺めながら…
廊下越しに庭を眺めながら… びっくりドンキーのハンバーグを食べる。
これぞベル 大通店の醍醐味だ。
ヒストリカルな展示の数々
2階フロアに行く階段の踊り場には数多くの展示がなされており、ここがびっくりドンキーのルーツであることを印象付けられる。
べるのロゴ。その時々でロゴの細部は変化していたのだという。
当時の従業員はこのロゴを真似して、口ひげをしていたのだとか?
ここから全てが始まった。
1968年12月、盛岡市の日の出会館1階にて「ハンバーガーとサラダの店・べる」が創業したことから、びっくりドンキーの歴史が始まったのである。
こちらが「ハンバーガーとサラダの店・べる」にて提供していたハンバーガーの写真。
しかし創業から3年後、大手ハンバーガーチェーンが日本に上陸したことから、ハンバーガーではないものとしてご飯を使ったレシピへの試行錯誤が始まったのだという。
創業当時の庄司昭夫社長の写真。
べる、おしゃれな店内である。
べるのメニュー表。(印刷が荒くて内容は読解不能…)
1971年、この「べる 大通店」がオープンした時のロゴ。
ハンバーガーからハンバーグへと舵を切った1店舗目である。
よってハンバーグの店と書かれている。
べるとしては2店舗目だが、ハンバーグの店 べるとしてはこれが1店舗目となる。
1983年のべる大通店の様子。
まだ1階部分でしか営業していない頃だ。
改装前のべる 大通店の内部の様子。マグカップがやたらたくさんある。
改装直前のべる大通店。
って!
べるなのかベルなのか!?
今あるのはカタカナを使うのだろう。
こちらは「べる 本町店」の様子。
1972年、べる本町店から導入された鉄板。今のステーキと呼ばれるメニューだ。
「べる 南大通店」だという。
これがべるの3号店だ。
「べる 中央店」。べるの4店目だ。
この後、ついに「びっくりドンキー」が生まれることになる。
べる大通店の初代店長で、元祖ドアマンである佐々木氏。
「シーゲル」
なんだろう、これは!?
佐藤シゲルさんが作ったから「シーゲル」という名前なのだそうだ(知らんがな!)
すきやき風のハンバーグだとか。ああ、これは美味しそう。
自分も是非とも食べてみたい。
当時からびっくりドンキーには独創的なメニューと、個性的なネーミングのカルチャーがあったことを思わせる。
ディッシュの原型は1973年に生まれたのだという。
ほぼ、今のびっくりドンキーに通じるスタイルだ。(チーズのかけ方も)
なお箸袋に「カウベル」と記載されているが、これは当時の運営会社の名前が「カウベル・カンパニー」であったことに由来していると思われる。
こちらはお持ち帰り用のハンバーグ!
手提げの赤いバッグがまたオシャレである。
ベルのメニュー一覧。
今のびっくりドンキーにもあるメニューが揃っている。
和室の方にも当時を思わせる写真の数々が飾られている。
びっくりドンキーの原点ということを、強く感じさせてくれる空間だ。
びっくりドンキーの定番を「ベル」で食べる
テーブルに置かれたお手拭きは、ベルのシグネチャーモデル。
以前は紙ナプキンにもベルのロゴ印字があったが、こちらは廃止されたようだ。
そして運ばれてきた「チーズバーグディッシュ 300g」!
びっくりドンキーでも定番のメニューだ。
箸で食べるのが基本である。
X字にかけられたチーズが、ハンバーグの熱でどんどん溶けていく。
ハンバーグはやわらかいので、箸で簡単に食べることができる。
このドレッシングもびっくりドンキーのオリジナルのものだ。
ハンバーグのしたたる肉汁、とろけるチーズ、フレッシュな大根のサラダ、つややかなライス。どれを取ってもこだわりを感じられる味で、全びっくりドンキーの基本となっていることが感じられた。
では、「ベル」ならではの味になっているかと言えば、びっくりドンキーと寸分変わらない。
しかし、この特別な空間で提供されるハンバーグを食べると、試行錯誤を繰り返してここにたどり着いた歴史の重みを感じることが佳き旨味となって、より一層おいしく食べることが出来た。
盛岡で今でも1店舗だけある「ベル」。
びっくりドンキーが好きなら、是非とも訪問してみたい店舗だ。
ここ、正式名称は「びっくりドンキー ベル大通店」かな?