天下一品を見たとき、人は…
天下一品。
それはこってりラーメンの代名詞。
他のラーメン店とは一線を画し、類似店がほとんど出てこないそのスタイルは、まさに孤高の存在。
あるときは駅前で、あるときはロードサイドで。赤丸に「一」のマークと「天下一品」の看板文字、そしてギラギラと点滅した装飾を見るだけで、人間は脳の視床下部にある食欲の神経を刺激され、「ああっ、天下一品に入るべきか!どうしようか!?」と罪深い行動が促される。これは人間の本能だから仕方ない。
しかしだ。
欲望をどこまでも刺激してくるような都市部ではなく、のんびりとした牧歌的な田舎の民家の中にぽつんと天下一品があるとどうだろう?
そこで人間の脳はバグってしまい、正常な処理ができなくなる。
そんな天下一品に行ってきた。
こんなところに天下一品があるわけない!
やってきたのは滋賀県甲賀市、信楽。
狸の陶器で有名だが、近年はNHK朝ドラ「スカーレット」の舞台にもなり、多くの観光客が来るようになったという。
しかしいくら観光客が来ようが、ここは牧歌的な風景が広がるのんびりとした田舎だ。
見よ、この景色を。
田んぼと農道、新緑の緑が眩しい季節。
こんな所に天下一品があるわけないだろう。
穏やかに流れる農業用水。
こんな所に天下一品があったら3回まわってワンって言ってやるよ!
ひたすら田んぼと農道ばかり。
あるわけないだろう?こんなところ… あれ?
あれ!?
これは!!
バーーン
天下一品 上朝宮店!!!
えええっ!? どういうこと?
突然の天下一品に心の準備が追いつかない!
純和風な日本家屋が最高に格好いい
小鳥のさえずりが聞こえてくるような雰囲気の中、日本家屋の軒先に、あの「天下一品」の看板を見たときは目を疑ったが、どうやら本気の天下一品のようだ。
この堂々たる門構えに、深紅ののれん。
他の天下一品とは、全く違う雰囲気を醸し出している。
中には日本庭園があり、そして重厚な母屋がある。
これが天下一品 上朝宮店の本体だ。
紛うことなき天下一品の証拠。
この暖簾をくぐるまで、少しの順番待ちだ。
味のある待合スペース。卓上の囲炉裏を囲むようにして、天下一品のラーメン店への入店を待つのだ。
天下一品の年表もあるので、入店まで予習をしておこう。
玄関には創業者であり代表取締役の木村勉氏の書「正しい努力」が掲げられている。
これは北白川総本店にも掲げられており、天下一品の企業理念となっている。
日本家屋で味わう「こってり」は格別
上朝宮店の店内は日本家屋そのままだ。
玄関で靴を脱ぎ、畳の部屋に上がる。
厨房というより台所といったほうがしっくりくる。
ここでラーメンなどが調理されているのだ。
廊下からは日本庭園が見えて、風情もたっぷりだ。
…ここ、天下一品のお店なんですよね?
食べるのは座敷ではなくテーブル席だ。
置かれたお手拭きで、ここが天下一品であることを再度認識させられる。
こんな落ち着いた天下一品だってあるのだ。
メニューはブック形式。
メニュー構成がシンプルな天下一品ではあまり見かけないタイプだ。
天下一品の定番意外にも、オリジナルメニューが充実しているのが上朝宮店の特徴だ。
この他にもまだまだオリジナルメニューが用意されている。
そして運ばれてきた「こってり 並 にんにく入り」!!
「にんにく入り」というのは、関西の天下一品では必ず「にんにく入れますか?」と聞かれるのである。非常時以外はにんにくを入れる、これぞ関西の天下一品のスタンダードだ。
見た目は一般的な「天下一品のラーメン」そのものである。
チャーシューだってもちろん入ってるし…
独特のスープ、これぞ天下一品だ。
食べてみると、あ… 本店とはまた違った、落ち着いた感じのまろやかさがある!
ドギツい味ではなく、かといってあっさりでもない。
ギリギリのラインを攻める天下一品が、ギリギリのラインを守っているような味といったら伝わるだろうか?
この雰囲気抜群の日本家屋で食べるから、余計にそのように感じるのかも知れない。
しかしながら上品さすら感じるこの味に、ついつい最後の一滴までスープを飲み干してしまった。
ごちそうさまでした!