アンデルセン 旗艦店 広島アンデルセン

パンの歴史、そして広島の歴史がここに

全国で展開するベーカリーチェーン「アンデルセン」
その1号店であり「旗艦店」と称する本店は、広島県広島市にある「広島アンデルセン」だ。

繁華街である広島本通り商店街にある「広島アンデルセン」
その威風堂々とした佇まいが大迫力だ。

角地にあるため、建物の造りがよく分かる。

ここがアンデルセンの本店であり、1号店である。

アンデルセン童話で有名な人魚姫のモニュメントも掲げられている。

広島アンデルセンの建物は5階建てとなっている。

1階から5階までのフロアマップ。
ベーカリーショップは1階のみだ。

被爆を今に伝え、平和と復興のメッセージを込めた建物

日本は世界で唯一の原子爆弾投下国。そして世界最初の被爆都市、広島。
1925年に三井銀行広島支店として建てられたこの建物は、原爆投下時点では帝国銀行広島支店として営業されていたものだ。

爆心地に近く、ほとんどの建物が全壊した中で、たまたま全壊を免れた広島県産業奨励館(原爆ドーム)帝国銀行広島支店は、広島の平和を象徴する建物として残され、それぞれ異なった運命を歩むことになった。
そのままの痛々しい姿で保存された原爆ドームと違い、帝国銀行広島支店は修復され、1950年には銀行業務を再開している。

広島アンデルセンには、その当時の様子を伝えるパネルが展示されている。

そしてアンデルセンを運営する株式会社タカキベーカリーの歴史は、終戦間もない1948年、創業者である故・高木俊介氏によって広島市比治山本町で創業したパン工場に始まる。
1952年には広島の本通りに、ベーカリーショップ「パンホール」をオープン。これが現在のアンデルセンのルーツとなる。そして株式会社タカキのパンを設立する。

1962年には、デンマークに視察に出かけた高木俊介氏が、ホテルの朝食に食べたデニッシュペストリーに感動。デンマークから技術師を呼び、オリジナルのデニッシュペストリーを開発する。これが現在のアンデルセンの人気メニューの原型となる。そして社名も株式会社タカキベーカリーへと変わる。

そして1967年、タカキベーカリーが上述の帝国銀行広島支店を建物ごと購入し、「広島アンデルセン」として営業を開始する。現在の場所と同一であり、アンデルセンの1号店となった。

1970年には東京に進出し、「青山アンデルセン」をオープン。
1972年にはアンデルセンの姉妹店「リトルマーメイド」の1号店がオープンする。リトルマーメイドは冷凍パン生地を使ったベイクオフシステムによる店で、どの店でも同じ品質のものを省スペース・少人数で調理できることが特徴だ。

そうして着実に繁栄を続けて来たアンデルセングループ。
21世紀になっても広島アンデルセンは旧・帝国銀行広島支店の建物での営業が続けられたが、耐震補強を繰り返してきたとはいえ東日本大震災クラスの地震に耐えられず、さらなる補強には途方もない予算が必要になることが判明したため、建て替えることが決定された。最終営業日は2016年2月27日であった。

立て替え期間の間、本店機能は広島市の紙屋町に設けられた仮店舗で行われていた。
当時、外から撮影した広島アンデルセンの仮店舗の様子。

そして2020年、満を持して新生「広島アンデルセン」がこの地にオープンする。

この新生広島アンデルセンビルのデザインは、旧・帝国銀行広島支店の意匠が大きく踏襲された。
中でも、帝国銀行広島支店時代に使われていた外壁と窓枠の一部がそのまま再利用されているのが最大の特徴である。

その様子を説明したパネルも設置されている。
新築ながら、本通りに残る唯一の被爆建築となっているとか。

それは、この部分だろう。

白くて細いラインがはめ込みの境界だろうか。
全く違和感なくはめ込まれているが、この外壁は被爆しているのだ。

そんなアンデルセンは、2021年4月現在、全国に「アンデルセン」49店、「デニッシュハート」24店、「リトルマーメイド」279店で運営されている(本社発表数字)。

それでは、入店してみよう。

日本で初めてのセルフサービス方式

1階にあるベーカリーマーケットと、ヒュッゲパークを見ていこう。
広いフロアではパンのみならず、数々の食品や飲料が販売されている。

デニッシュペストリーのアンデルセンを象徴する、人気No.1の商品といえばこれ「ダークチェリー」
デニッシュペストリー生地にカスタードクリームとアーモンドペーストを重ね、ダークチェリーをトッピングして焼き上げられたものだ。

ちなみに今ではどのベーカリーでも基本になっている、セルフサービスでパンを取っていくスタイルは広島アンデルセンから始まっている。
旧・帝国銀行広島支店の中が狭く、アイスクリームのショーケースを置いたらパンが置けなくなり、苦肉の策で木製の棚を作って置いたことが始まりだという。

ふんだんに使われたバターが芳醇で、そこにダークチェリーのフルーティな味わいが絶妙にマッチする。

もう一つのデニッシュペストリーは「スパンダワー」
こちらはデニッシュ生地にカスタードクリームが絞られ、その上にアーモンドスライスがトッピングされたものだ。

アーモンドスライスの香ばしさとクリームの優しさを同時に味わえる。

いわゆるメロンパンのような「サンライズ」

惣菜系もある。「広島熟成どりとじゃがいものフォカッチャ」

アンデルセンのブランド「ヒュッゲ」のジャムシリーズ。

芸北産のりんごを使ったという。
広島産へのこだわりが見える。

ヒュッゲブランドのアッサムミルクティーやカフェオレもラインナップ。

こちらは自社ではなく、島根県にある木次乳業の製品たち。

ケーキもあり…

チーズもあり…

ハムやウインナーもあり…

ワインの数々も並び…

なんとヒュッゲブランドの白ワインまである!
こちらも広島芸北産のりんごを使用したものだ。

日本のベーカリーの歴史。
デンマークに深く根付いたデニッシュの歴史。
そして広島の歴史。

広島アンデルセンはその3つが交差する重要な拠点として、昔から今もなお、多くの人に愛され続けている。

アンデルセン 旗艦店 広島アンデルセンの地図

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