倉敷のソウルフード「ぶっかけうどん」発祥の店
讃岐うどんの本場にも近い岡山県には、数多くのうどん屋がある。
その中で、ぶっかけうどんというスタイルを提唱したお店として知られるのは、倉敷にある「ふるいち」。
ぶっかけうどんを提供した店舗(後述)としては1号店として知られるのが「仲店」だ。
倉敷駅を降りて、歩道橋に登る。
そこからよく見えるのが「ふるいち 本店」だ。
屋上には大型ビジョンがあり、ぶっかけうどん ふるいちのCMなどが流されている。
ふるいち 本店。
しかし、ここではぶっかけうどんは提供されていない。
壁に掲げられた、「ぶっかけうどん 発祥の地」のプレート。
しかし、ぶっかけうどんの店としての1号店は、ここから40メートルの所にある。
この道を行けば…
ぶっかけうどん ふるいち 仲店に到着!
○の中に「ぶ」というシンプルなロゴマークから、「まるぶ」と呼ばれることもあるとか。
倉敷名物 ぶっかけうどん ふるいちと書かれた古い看板に味がある。
外のワゴンにはお土産セットの見本が展示されている。
それでは入店してみよう。
長い歴史の中で、思いつきで始めたぶっかけうどん
ふるいちのルーツは、1928年頃からうどんの小麦を製粉しながら全国向けの乾麺を作っていたというところから始まる。
そして戦後の1948年になり、ふるいち創業者である古市博氏がアイスキャンデーの行商を始めた。
しかし、冬になるとアイスキャンデーが売れなくて、新たに売り出したのが「夫婦饅頭」。
夫婦饅頭は「ふーまん」と呼ばれ、その専門店を「古市商店」という名前の店舗で始めたのが、ふるいちの始まりだ。
その頃、ふつうのうどんを提供する店になっていたが、古市博氏が麻雀をしながらざるうどんを食べていた時、(麻雀をしながら食べたいから)つけ汁や薬味を最初からうどんにかけてほしい、とリクエストしたことから、ぶっかけうどんの歴史が始まる。まるで岡山版のサンドウィッチ伯爵だ。
「このメニューを専門店として出したらどうだろう?」と思いつき、翌日にはお店のメニューに並んだのだとか。
この時の店舗は現在の本店の位置だったが、後年、国道2号線(国道429号線)の拡幅で土地を譲渡したため、現在のような狭小な店舗となってしまった。
そして手狭になった本店から、ぶっかけうどんの専門店として近くに店舗を構えた。それが今の「仲店」(なかみせ)であり、倉敷駅前のセンター街にある。
本店は今でもふーまんの店として、季節限定で営業をしている。
2022年1月現在、岡山を中心に11店舗で運営されている。
入口に飾られた、2021年モンドセレクション最高金賞受賞のメダル。
なんと4年連続でモンドセレクションの最高金賞を受賞している。
ふるいち 仲店のシンプルな店内。
ふるいちでは基本的にセルフサービスだが、仲店だけがフルサービスとなっている。
ふるいちのグランドメニュー。
ページを開くと、大きく「ぶっかけ」「汁うどん」に分かれている。
ツルリとしたのどごしの麺を濃く甘いたれに絡めて食す。
天かすとショウガをよく混ぜて、一日一麺「ふるいち」の味を。
だしは、利尻昆布、枕崎・山川の鰹節など、厳選した素材をブレンド。
うどんは、軟水に瀬戸内の塩で最高のミネラルバランスを実現した水を使用しています。
今回はベーシックな「ぶっかけうどん」をオーダー!
かき氷がダイナミックだ。
揚げもちぶっかけ、梅おろしぶっかけなどのバリエーションもある。
ふーまんを作るふるいちならではの、自家製餡を使ったぜんざいも。
なんと英語版まで用意されている。
BUKKAKE!!
モチモチの麺と濃い目のつゆの、コントラストがはっきりしたうどん!
しばらくして運ばれてきた、「ぶっかけうどん」!
倉敷のソウルフードとまで言われるぶっかけうどんを、発祥の店で食べる瞬間だ。
やや太めの麺の上には天かす、のり、生姜、青ネギ、そしてうずら卵の黄身がトッピングされている。
ぶっかけうどんの食べ方が指南されている。
食べ方といっても実質「混ぜる」しか書かれていない気がする。
とにかく豪快に混ぜるのだ。
まずは、そこそこ混ぜて味見を。
モチモチと弾力のある麺に、濃い目のつゆ(タレと呼ばれている)が絡みつく。
さらには、生姜や天かすなどの薬味も一緒に口の中に入ってくる。
讃岐うどんとは全く違う、どこかパンチのあるうどんだ。
薬味が美味しく、特に生姜の味がフレッシュで、パンチにさらなる強度を与えている。
食べているうちに身体が温まってくるような気がする。
さすがぶっかけうどんの専門店というキャラクターがあった。
お土産用の麺も販売されている。
ぶっかけうどん ふるいち。
一人の男性が麻雀中にたまたま思いついた食べ方が、長い年月を経てソウルフードと言われるまでになった。
それは、麺、出汁、薬味などに対するあくなきこだわりと、気軽に入店できる敷居の低さをずっと守り続けているから、だろう。
今や全国区の知名度のあるぶっかけうどん。
その歴史は、まさにこの店から始まったのだ。