海鮮アトム 本店

そのアトムは福井で生き続ける道を選んだ

かつて、アトムボーイという回転寿司店があった。カジュアルで低価格な回転寿司として、手塚治虫「鉄腕アトム」のキャラクターをイメージに据えて、全国的な展開を行っていたチェーン店だ。
時は経ち、いつの間にかアトムボーイは絶滅し、今はそれぞれにぎりの徳兵衛にぎり長次郎といった看板となって運営されているが、創業の地にはその「アトム」を冠する回転寿司チェーンが存在する。
それが海鮮アトムだ。
本店は福井県福井市にある。

廻転寿司 海鮮アトムとある看板。
フェニックス通りの三叉路に面していて、存在感もたっぷりだ。

海鮮アトム 本店と書かれた看板。
そう、ここが本店であり、この地がアトムボーイ誕生の地なのだ。

複雑な歴史を経てアトムに着地した現在

海鮮アトムの歴史を振り返ると、実に半世紀前に始まる。

その歴史は1972年、福井県福井市開発に株式会社徳兵衛寿司(現株式会社アトム)が設立され、1965年に開業した寿司店「徳兵衛寿司」を継承するところから始まる。
1977年8月には徳兵衛寿司の本店が福井市大宮に移転する。それがここ、海鮮アトムの場所だ。

1977年10月、回転寿司店に転換するにあたり、回転寿司のパイオニアである大阪の元禄寿司のコンベア特許を利用するため、店名・会社名ともに元禄寿司となるが、その後1978年には回転寿司のコンベア特許が切れたため、この年以降は元禄寿司のフランチャイズである必要はなくなり、全国的に回転寿司のビッグバンが始まる。

1980年、元禄寿司は京都の株式会社アトム(のちのフーズネット)と共に日本テレビ音楽株式会社を通じて手塚治虫「鉄腕アトム」のキャラクター使用許諾の契約を締結(締結先は手塚プロダクション)し、共同で新たに「アトムボーイ」という名前で回転寿司のチェーン店を展開させる。

アトムは東海から東日本を、フーズネットは西日本をエリアとし、この両社が展開するアトムボーイの店舗数は90年代の最盛期には200店を超えるほどの勢いを持った。

1997年、廻転寿司アトムボーイという名で高級志向の回転寿司店を愛知県豊田市にオープンさせる。これがその後の海鮮アトムの1号店となる。
(ちなみに、元禄寿司は「回転寿司」「回る」などの言葉も商標登録していたが、1997年に解放されている。この廻転寿司アトムボーイという店名はそのタイミングだと言える)

2000年代に入り、回転寿司市場の競争が激化するとアトムボーイは劣勢を強いられ、2002年にフーズネットは倒産。
再起後はグルメ回転寿司のにぎり長次郎ブランドを中心に再建を行う。

また、2002年にはアトム社も高級志向の回転寿司新ブランド「回転寿司にぎりの徳兵衛」を愛知県東海市にてスタート。これは福井で創業した徳兵衛寿司の名を冠したものだ。

2005年にはアトム社も株式会社コロワイドの連結子会社となるなど、アトムボーイをとりまく環境は大きく変わり、アトムボーイだった店舗は徐々に他ブランドや他業態へと転換される。

その転換の中で、アトム社の回転寿司業態としてはにぎりの徳兵衛廻転寿司アトムボーイ廻転寿司海へが残り、廻転寿司アトムボーイは海鮮アトムボーイ海鮮アトムと名前を変えて、現在は創業地の福井県でのみ営業するローカルチェーン店となって残っている。

ちなみに「アトム」と冠しているにもかかわらず、すでに手塚プロダクション「鉄腕アトム」のIP使用契約は解消されており、どこにも鉄腕アトムのイラストは無い。

そしてここは永らく海鮮アトム 幾久店であったが、2017年のリニューアルオープン時から明確に「本店」と名乗るようになった。

2016年訪問時の海鮮アトム 幾久店。「本店」の記載はない

現在(2020年)には「本店」の看板が付いている。
ここが本店になっているのは、1977年8月に徳兵衛寿司をこの地に移転したことに由来している。

入り口の看板もここが本店であることを主張している。

2020年12月、海鮮アトムは福井県内を中心に10店舗で運営されている。

広い店内と充実のサービス

海鮮アトム 本店の店内は広く、リニューアルしたばかりということもあって新しさがある。
とても気持ちのよい空間だ。

テーブル席が主体の回転寿司ということで、テーブルの脇をレーンが流れる。
各テーブルに1台ずつ、タッチパネル端末が用意されている。

少ないながらカウンター席も用意されている。

海鮮アトムが良いのは「日替わりお味噌汁 お替わり自由」という無限お味噌汁バーだ。
お味噌汁が好きなのでこれはかなり嬉しい。

回転寿司店の定番の黒板もある。この日はマグロ推しであった。

Zeetleに登録したらサービスというのは、これである。

スマホのスタンプアプリだ。リピーターの人はこれを使うと良いだろう。

海鮮アトム 本店のタッチパネル端末。

皿ごとの価格は100円から680円まで、細かめに刻まれている。

ガリもフレッシュで美味しい。

テーブルの上には粉末茶、海鮮アトムオリジナルの醤油のほか、ポン酢、岩塩が用意されている。
ポン酢と岩塩は回転寿司としては珍しい。

さすがグルメ回転寿司!ネタの大きさと新鮮さ

タッチパネルはマグロのページから始まる。

ぶり、ぶり塩ねぎなど。

こはだ、〆さばなど、光り物も充実している。
鯖の押し寿司などは、福井ならではといったラインナップだ。

こちらは〆さば。脂の乗った鯖が、すっきりとした味わいになって提供されている。

これは焼きさば。福井名物の寿司ネタだ。
その名の通り焼き魚のような感覚のネタとなっている。

ぶり。冬の魚として期待が高まるネタの一つだ。

鉄火巻き。1本が割と長めだ。

皿は海鮮アトムのシグネチャーモデルだ。

かつて全国的に一世を風靡したアトムボーイ。

時代の流れと共に、アトムボーイを冠する回転寿司は消滅したが、その発祥の地の福井では、ローカル回転寿司チェーンとしてアトムの灯がともり続けていた。

でももう、鉄腕アトムのキャラクターは必要無い。
なぜなら、空を超えて星の彼方からやってきたのは、新鮮な海の幸そのものだからだ。

福井でこだわりの回転寿司を味わいたければ、海鮮アトムの本店へ。
アトムボーイの歴史を感じる、福井の老舗だ。

海鮮アトム 本店の地図

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