もう一つの釧路のソウルフード、カレーチキン
ソウルフードと呼ばれる食べ物はどうやって発祥し、どうやってその地に定着したか。
このお店の「カレーチキン」は数奇な運命を辿り、今ではここにしか無いものとなった。
チェーン店を採り上げる本ブログで、ルーツ店以外で1店舗しか存在しない店舗は、ここくらいではないだろうか?
北海道・釧路市にあるファストフード「ジョイパックチキン」だ。
※2018年11月末にて釧路店は一端閉店し、2019年6月に芦野本店・昭和店を新たにオープンした。
釧路にある巨大ショッピングセンター「ビッグハウス釧路店」。
広大な駐車場には多くの車が止まり、賑わっている。
1階はスーパーマーケットがメイン店舗となっており、多くの客がレジに並んでいた。
この中にジョイパックチキンの店舗がある。
これがジョイパックチキン ビッグハウス釧路店の店舗だ。
以前はチェーン店だったが、今では…
ジョイパックチキンは小樽に1号店を持ち、そこから札幌、千歳、網走、留萌と北海道の中でチェーン展開をしていたファストフード店である。
しかし現在ではほぼ全ての店舗は閉店し、この「ビッグハウス釧路店」だけが残された最後の1店舗となっている。まさにファストフード界の絶滅危惧種だ。
釧路市内のジョイパックチキンは、1979年に釧路市柳町でオープンしたのを皮切りに、1981年に「十條サービスセンター」でオープンしたのがこの店舗となる。
「十條サービスセンター」は、十條製紙(現・日本製紙)釧路工場が運営母体の巨大ショッピングセンターであった。
その「十條サービスセンター」は1999年4月に運営母体が変わり、「ビッグハウス釧路店」となり、現在に至る。
カウンターの様子。今時のファストフードには無いレトロな雰囲気がある。
レトロなメニューがたまらない
ジョイパックチキンのメニュー。
レトロな雰囲気を最も醸し出しているのはこのメニュー表だろう。
スイートパックやロイヤルパックなど、箱の大きさによって名前が異なっているが、肝心の何ピース入っているかは記載されておらず、ミステリー感満載だ。
そもそも「ジャンボ」と「スーパージャンボ」の価格差が40円ならばスーパーの方を選ぶよね?とも思う。何がスーパーなのかはミステリーだが。
ちなみに「カレーチキン」と書かれたもの以外は普通の塩味のチキンであるので注意されたし。
なお、フライドポテトは「細」「太」から選べる。これは嬉しい。
なんと、「うどん・そば」がラインナップ。しかも「なべやき」まであるのだから驚く。
墨塗り教科書のように大量に消された「のみもの」メニュー。
「クリームソーダ」と記載されているのに、右下には「メロンソーダー」と、「ダー」になっているところが気になる。沖縄人がコーラをコーラーと言うようなものかも知れない。
そして「ジュースフロート」は、何のジュースなのか?ミステリーである。
上半分の大きな余白があり、突然の「エビピラフ」「五目チャーハン」「チキンライス」と炒め物のご飯がラインナップ。
そして下には「ホットケーキ」までも!
大半が隠されたこのメニューは「ソフトクリーム」「アイスクリーム」がラインナップ。ファストフード店の定番である。
隠された所はサンデーやワッフルソフトなどの凝った物があった様子だ。
グラフィカルなメニュー表も用意されている。結局これが一番分かりやすい。
かなり色あせた写真の「チーズバーガー」「ベーコンエッグバーガー」などがラインナップされているが、これが今でも注文できるかどうかは分からない。出来なさそうだ。
※コメントより
こちらのメニューは、1997年までテナントとして入居していた「雪印スノーピア十條サービスセンター店」の名残りとのこと。
突然のヒロ・ヤマガタ。
UKパンクのレコードみたいな雰囲気の、JOYPACK CHICKEN看板。
カウンターはこのようになっている。下のサンプル品にはちゃんと鍋焼きうどんがラインナップされている!
そしてテイクアウト用の箱のデザインが異様に可愛らしい。
厨房の中。人気店らしく、お客さんが途切れない。まさに大忙しといった状態のようだった。
これぞ地元に愛され続けている地元密着型のソウルフード。中には一度に30ピースを注文するようなお客さんもいた。
まさに、日本一忙しいジョイパックチキンである。ここしか無いけど。
ビッグハウスの出口を出たらすぐの所にケンタッキーフライドチキンがあるにも関わらず、だ。
ジョイパックチキンのセットを食べてみよう
そしてこれが「Aセット」である。
中身はカレーチキン1ピース、ポテト(細)、ドリンクSSサイズで、ドリンクはコーラだ。
ポテトには何かしらのスパイスが掛けられており、ちょっと他には無い味となっている。
このスパイスが絶妙で、食べ始めると止まらなくなってしまう。一体何なのだ…
そしてこれが「カレーチキン」!
ザンギを生んだ街・釧路がさらに生み出した、ここにしか無いカレーとチキンの合わせ技。
その名の通り、スパイシーな味付けの中にカレー粉の成分が織り込まれているものだ。
一口食べると「あっ、カレーだ!」と分かるこの味。ただのチキンとは違うスパイス感。
そしてしっかりとした噛み応え。
口の中に広がるカレーの味とチキンの味。これがどうも病みつきになってしまう美味さだ。
店内にはお客さんも多く、ほとんどの人がこのカレーチキンを食べており、ジョイパックチキンのカレーチキンは釧路にて確固たる地位を築き上げていた。
このカレーチキンは、ジョイパックチキン ビッグハウス釧路店のオリジナルメニューであり、他のジョイパックチキンの店舗には無かったものだという。
もしも他の店舗にカレーチキンがあれば、また運命は違っていたかも知れない。
釧路の、ここにしかないお店の、ここでしか食べることができないカレーチキン。
そのソウルフードたる味は、心に強く刻み込まれた。