帯広で愛され続けるソウル・カレー
インデアンという名前のカレー店と言えば、ある人は大阪のカレー店を思い浮かべ、またある人は北海道のカレー店を思い浮かべるかも知れない。もしくは、他にもどこかにあるかも知れない。
ここ、「カレーショップ インデアン」は帯広を中心にチェーン展開するカレー専門店だ。
2022年現在の最古店は、帯広市にある西21条店である。
帯広の街を左右に通る白樺通り沿いにあるインデアン 西21条店。
Curry Shop インデアンのサインが輝く。
道路沿いにも赤く大きな看板が掲げられている。
店舗は洋館風のクラシカルな建物だ。
自販機もインデアンカレー仕様となっている。
カレーショップ インデアンのロゴマーク。
このロゴマーク、何かに似ているな…と思ったら、これ。
こちら、大阪ローカルの「インデアンカレー」。
ターバンを巻いて白髭を蓄えた男性が左を向いている横顔のイラストと、「インデアン」という店名までが同じだ。
とはいえ、よく見ると顔は別人だし、ローソクは無い。
一体どんなお店だろうか?
入店してみよう。
大手カレーチェーンも撤退するほど愛される、帯広のソウルフード
カレーショップ インデアンのルーツは古く、創業者である故・藤森熊作氏が1906年に帯広駅の待合所の営業を始めた所から始まる。待合所はやがて藤森食堂と名を改め人気を博す。
戦争で一旦休業するが、終戦後の1946年に帯広駅の前で藤森食堂は再開される。
3代目社長である故・藤森照雄氏の時代、藤森氏はカレー専門店を着想する。2年ほどの準備期間を経て、1968年、ついにカレーショップ インデアンの1号店が帯広市内にオープン。ここから、インデアンの歴史はスタートする。
2022年現在、株式会社藤森商会は5代目社長の藤森康容氏によって運営され、カレーショップ インデアンは帯広に10店舗、釧路に2店舗で運営されている。
ここ西21条店は1989年にオープン。現在のインデアンカレーの中では最も古い店舗だ。
人口16万人の帯広でインデアンは確固たる地位を確立。そのせいか、カレーハウスCoCo壱番屋が帯広エリアに店舗を出店するも、敢えなく撤退してしまうということが2度もあったという。
マクドナルドよりもラッキーピエロの方が店舗数が多い函館にも似た、まさに強いローカルチェーン店と言えるだろう。
ところで、大阪のインデアンカレーと名前やイラストが似ていることについて、その経緯などは不明とのことだ。インデアンカレーは1947年に創業したので、帯広のインデアンより21年先である。藤森照雄氏はインデアン創業の前にカレーを研究するために全国を行脚して、その時に食べたらしい大阪のインデアンカレーが気に入ったのかも知れない。
入口脇に貼られたメニュー。
とてもシンプルな構成と、安価な価格が嬉しい。
インデアンでは家から鍋やタッパーを持ってきて、カレールーを購入して持ち帰ることができる。
お客さんの4割はカレールーを購入するというからすごい。
インデアン 西21条店の店内。
カウンター席もあれば…
広々としたテーブル席もある。
インデアンの特徴は、店内に掲示された映画ポスターの数々。
これは、インデアンを創業した藤森照雄氏が映画好きで、他の飲食店にはない特徴を、とのことで掲示したのが始まりだという。
なお、ラインナップは店舗によって異なるという。
カウンターのコーナーの上部に…
インデアンのオブジェがあるのが格好いい!
懐かしく、コッテリしていて、コクのあるカレー
テーブルに置かれたメニュー表。
ルーは「インデアンルー」「野菜ルー」「ベーシックルー」の3種類がある。
今回は「インデアン」をオーダー!
裏面にはお持ち帰りメニューが用意されている。
3種のルーの説明書き。
牛内をふんだんに使い、数十種類のスパイスで熟成させたカレーです。
辛さも控えめでお子様から大人の方までおいしく召し上がれます。十勝の定番カレーです。ベーシックルー
ビーフのエキスが溶け込んだルーに玉ねぎを加え、旨味と甘味をひき出したシンプルなカレーです。
どんな具材にもマッチして、美味しさを引き立てます。
野菜ルー
大ぶりなじゃがいもと人参、玉ねぎが入ったカレーです。
雄大な北海道と道産子の素朴な優しさを感じさせる味です。
とりあえず、十勝の定番ルーであるインデアンルーを食べてみよう。
トッピングは何も無し。牛肉を中心に煮込まれたインデアンルーが、ライスの上に被さるようにダイナミックにかけられている。
そのコッテリ具合は、どこか金沢カレーに似ている。(このステンレスの皿も相まって)
これ、ここに書かれている文は嘘ではなく、少しかけるだけで後からジワジワと辛さがやってくる。
シンプルにして、キャラ立ちのしたカレーが、低価格で楽しめる。
帯広で創業して半世紀近く、地元の人を今も虜にし続けている。
この味で育った人は、帯広に帰ったら必ず食べたくなるのではないだろうか。
そんな郷愁すら感じさせてくれた。