伝説の1号店
2017年2月現在、築地市場が豊洲に移るかどうか?という問題が揺れている。
当初の計画では、2016年11月に豊洲に移っている計画だったのだが、諸問題により市場移転が延期されている。
そんな中、一つの歴史的な1号店が失われようとしている。
吉野家 築地一号店だ。
吉野家は、1889年に魚河岸(現在の築地)に1号店を創業し、今年で118年という歴史のある牛丼専門店である。
その1号店は今も築地に存在する。
だが築地市場の中にあるため、市場が移転になると同時に吉野家の1号店も閉店することになる。
吉野家築地一号店は営業時間を築地市場の開場時間に合わせているため、月~土の5:00~13:00のみ営業という特殊な形態である。
前述の通り2017年2月現在、築地市場は「延長」稼働中であるため、それに合わせて吉野家築地一号店も「延長」で営業中である。
しかし、市場移転に関することは今のところ不透明なので、吉野家築地一号店の今後の営業期間もどうなるか分からない。
移転のための閉店を前にした吉野家築地一号店に行ってみた。
特殊な吉野家、健在
Uの字になった木製のカウンターや、壁に設置された箸置き場の伝統は変わらず健在である。
ここは築地で働く「プロ」のための食堂。サッと食べて、サッと出て行く。そのために吉野家は長い歴史の中で、築地市場に合うように洗練されてきた。
吉野家を日常的に利用する築地の職人達の顔と注文方法を覚え、椅子にかける前にオーダーする。
ここにしか無い特殊な牛丼のカスタマイズと、それにスピーディに応じるための厨房内での工夫。
13時で閉店し、日曜日には休業日となるための食材の管理。
そういった洗練と、1号店としての歴史という、二つの大きなものを背負った特別な吉野家である。
BSE騒動でUSA産の牛肉が入らなくなった時も、この築地一号店は和牛で提供し続けた。それは、牛丼の火を絶やさないため、だったくらいの店である。
その歴史をすべてのお客さんが感じられるように、壁にはこのようなディスプレイがある。
メニューは伝統的にシンプルで、牛丼・牛皿のみとなっている。
肉の旨味、玉葱の旨味、出汁の旨味をはっきり感じる味
吉野家築地一号店の牛丼 アタマの大盛 である。
あくまでも「他店と同じ」とのことであるが、気のせいか、築地というパワースポットがそうさせるのか、実際に感じるその味は、とても奥深くて繊細で懐かしい。
神社の中にある吉野家の記念石碑
そんな築地一号店の歴史を後世に残すべく、2016年9月、築地にある波除神社の境内に、「吉野家 築地一号店 記念石碑」が奉納された。
波除稲荷神社。
吉野家 築地一号店 記念石碑。
吉野家の歴史が記されている。
2017年2月現在、この石碑と、「延長」営業をしている吉野家築地一号店が同時に存在しているのは、今だけなのは間違いない。
ちなみに、波除稲荷神社には「食」に関する数々の石碑があって面白い。
吉野家築地一号店。日本の外食史において重要な場所であることは間違いない。
行くならば(2017年2月現在)今しかない。その「味」を是非とも確かめに行こう。