魚沼の広大な田園風景の中で、へぎそばを打つ
新潟発祥のそばといえば「へぎそば」。
十日町を中心に数多くのへぎそば専門店がある中で、1922年創業の歴史あるチェーン店はここ、小嶋屋総本店だ。
魚沼の広大な田園風景の中、巨大な水車とともに存在感を放っているここが、小嶋屋総本店である。
まさに米どころ魚沼。360度全てこのような風景だ。
天皇陛下御用達のそば
敷地内には、へぎそばの説明が書かれた看板がある。
皇室には過去6回も献上したのだという、天皇陛下御用達のそばである。
小嶋屋総本店の創業者である小林重太郎氏の功績を後世に伝える碑が建立されている。
入り口までのアプローチには、へぎそばを作るための道具などが展示されており、ちょっとしたミュージアムとなっている。
小嶋屋総本店は、このように様々な場所でへぎそばの歴史を細かく教えてくれる。
へぎそばの老舗、小嶋屋総本店の歴史
小嶋屋総本店の歴史は長い。
1922年、創業者である小林重太郎氏が、中魚沼郡川西町木島町にて、農業の傍ら日本蕎麦専門店を創業したことをルーツとする。その時の屋号が、小林の姓から「小」、木島町の「島」を取り「小島屋」であった。
小林重太郎氏は、そばのつなぎに「布海苔」を使うことを考案し、こののど越しやコシを実現した。
その後、小林重太郎氏の長男である小林申一氏に継承され、現在は小林申一氏の長男である小林重則氏が三代目店主として小嶋屋総本店を継承し、2018年7月現在、新潟県内に8つの直営店を展開している。
ちなみに、新潟県内にて「小嶋屋」と銘打ったへぎそば店は他にもある。それらは、1955年に小林重太郎氏の三男が継承した「小嶋屋」(通称、越後十日町小嶋屋)、そして1965年には小林重太郎氏の五男が長岡にて継承した「長岡小嶋屋」がある。
長男の「小嶋屋総本店」、三男の「小嶋屋」、五男の「長岡小嶋屋」、この3つが小嶋屋の系譜だ。
それぞれ独自の製法を追求しており、味などは異なるという。
入り口にあるディスプレイもまた、凝った物となっている。
小嶋屋総本店の店内はテーブル席、ボックス席、カウンター、そして個室と、様々なバリエーションが用意されている。
店内の調度品も細かく凝られており、雰囲気は抜群である。
創業者である小林重太郎氏の写真が飾られている。
天皇皇后両陛下の写真、そして数々の感謝状が飾られている。
小嶋屋総本店の歴史を感じさせる。
そば・めんつゆ・そば茶などの販売も行われている。
へぎそばはもちろん、和食を広くラインナップするメニュー
小嶋屋総本店のグランドメニュー。
やはりそばから始まり、天ぷらや丼物などのサイドメニュー、そしてうどんもある。
ここはオーソドックスな「へぎそば」1人前をオーダー。
メニューでもしっかりと、へぎそばや小嶋屋の歴史を教えてくれる。
運ばれてきたお茶はそば茶だ。香ばしいそばの香りを楽しめる。
テーブルの上の薬味。
左からごま、七味、ゆず七味、藻塩となっている。
ゆず七味はそば湯で割ってから入れることがお店のおすすめだそうだ。
小嶋屋総本店 オリジナルの箸袋。
ねぎは自由に入れることが出来る。
ごまは自分で擦るタイプだ。
そしてからし。これもへぎそばの特徴で、元々わさびが採れなかった地域であることと、布海苔つなぎにはわさびよりもからしが合うことなどから、へぎそばをからしで食べる文化が広がったという。
もちろん、わさびで食べることも可能だ。
これがへぎそば!木の器を「へぎ」と呼ぶ
そして運ばれてきた「へぎそば」。
「へぎ」とは、へぎ(片木)という剥ぎ板で作った四角い器のことであり、食材のことではない。
この木の器に入ったそばこそが「へぎそば」である。
そしてこのように、一口でつまめる束にまとめることもまた、へぎそばの特徴である。
ごまをすって、つゆの中に入れる。
味としては、布海苔つなぎを使っていることがへぎそばの特徴であり、そばの風味と布海苔の風味が絶妙に混ざり合った、香り豊かなものとなっている。
何よりも食感が気もち良い。程よく弾力のあるコシと、唇の上をスルスルと滑っていく滑らかさ。
これらを束ごと口に入れて、一口で食べる。
あっという間に1人前を食べてしまった。
新潟にて100年近い歴史を誇るご当地そば「へぎそば」。
布海苔つなぎを考案した創業者・小林重太郎氏に思いを馳せつつ、新潟の豊かな自然も存分に感じることができた。