家系、それはここから始まった
今やラーメンのいちジャンルとして定着した、家系ラーメン。
そのルーツとなる店舗であり、今なお伝統を守り続ける店舗がここ、「家系総本山 吉村家」だ。
※2023年3月に移転しました。これは移転前の店舗です。
横浜駅西口から徒歩8分。新横浜通りの平沼橋付近にあるここが、家系総本山 吉村家だ。
家系総本山 吉村家はチェーン店ではなくここにある1店舗だけだが、多くの直系店(暖簾分け店)と、影響を受けた店が生まれた。
まさに総本山である。
昼時には多くのお客さんで賑わう。
外に並んだお客さんを店内に案内するスタッフの手際の良さに、熟練みを感じた人も多いのではないだろうか。
お客様は我が味の師なり
家系総本山 吉村家 統将 吉村実
シンプルで力強い宣言文を見ると、味への期待が一気に高まる。
家系総本山 吉村家は、1974年、店主である吉村実氏によって、横浜新杉田の産業道路沿いで創業したラーメン店だ。
とんこつと鶏ガラベースのスープと濃厚な特製醤油ダレ。
家系ラーメンの特徴であるこのスタイルは、創業前はトラックの運転手をして全国のラーメンを食べた吉村氏が、試行錯誤をして編み出したものだ。
1999年には現在の店舗に移転し、連日多くのファンが詰めかける吉村家。
チェーン店ではないが、2021年3月現在の直系店としては杉田家、はじめ家、上越家、厚木家、高松家などがある。
また全国の「~家」という名称を持つラーメン店も「家系」と呼ばれることが多いが、その多くは吉村家の直系ではない。
ラーメンに集中できるストイックな雰囲気
吉村家では、先に食券を購入する仕組みだ。
サイズは並盛り、中盛り、大盛りとあり、チャーシュー麺もある。
一部のトッピング類は、現金を直接カウンターに置くことで、後から購入することも可能だ。
入店すると、威勢よく調理する厨房の職人さん達と、ラーメンを食べることに集中するお客さんのためだけに時間が流れているような、ストイックで緊張感のある空気に満ちている。
吉村実氏の長男であり現在の店長である吉村政和氏に実氏より渡された家系皆伝の認定証と、家訓が掲示されている。
多くの感謝状と、即席ラーメンが展示された空間が、吉村家の歴史と功績を今に伝えてくれる。
テーブルの上には、多くの薬味や調味料がスタンバイ。
きざみ生姜、コショウ、ニンニク、行者ニンニク、ニンニクチップ、ごま、醤油、酢、豆板醤など、多岐に渡る味変ツールが用意されている。
特に緑色の行者ニンニクは少し珍しい。
太麺の食感と濃厚なスープがどこまでも至高
しばらくして運ばれてきた「ラーメン 並」!
これが吉村家 総本山のラーメン… どこか完璧さすら漂う佇まいだ。
目にとまるのは、センターに鎮座するほうれん草だ。
チャーシューは豚モモ肉のスモークだ。
そして何より、スープ!
口に入れると、醤油の味がバシっと効いてくる。
その後、鶏ガラととんこつの旨味が、じんわりと残る。
そのバランス感が絶妙なのだ。
塩っぱすぎず、薄すぎず。
吉村家 総本家の伝統をダイレクトに感じることができる。
吉村家とその直系で、伝統的に使われる、酒井製麺の麺。
麺の固さなども全て普通でオーダーしているので、硬すぎず、そして柔らかすぎず。
噛むと、モッチリとちぎれるような食感で、跳ね返すような弾力系とは違う。
そして太麺で、濃厚なスープにしっかり絡みつく。
家系総本山 吉村家で食べる、ラーメン。
今や全国区となった、ジャンルとしての家系。
その全てのルーツであり、存在感のある総本山で、何も足さず、何も引かない「ラーメン」を食べる。
それは至福の時間以外、何物でもない。
吉村実氏の情熱は、ラーメンの中で熱く生きていた。