サラリーマンの街に忽然と現れたとんかつ屋
新橋の隣りの汐留は汐留貨物駅の広大な敷地が再開発され、2005年頃からシオサイトという愛称と共に電通や日テレなど多くのオフィスビルが立ち並ぶ最新ビジネス街となった。
そんな汐留の再開発とタイミングを合わせるかのように、新橋駅前のレトロなビルで創業したとんかつ屋が「とんかつ まるや」。
1号店は、今も営業を続ける新橋駅前本店だ。
新橋駅前に、昭和の雰囲気を漂わせる「新橋駅前ビル」1号館。
大隈講堂や大津市役所などを設計した建築士、佐藤武夫氏によるものだ。
このあたり一体と烏森口にあるニュー新橋ビルは、再開発のため近年中に姿を消すという。
そんな新橋駅前ビル1号館では、淡いピンク色の「とんかつ お酒 まるや」「定食700円~」と書かれた看板が目に入る。
新橋駅前ビル1号館に入った脇に、まるやへの入口がある。
入口の立て看板にはおすすめが。
「特ロースかつ」が1000円と、リーズナブルだ。
それでは、とんかつの油の匂いに誘われるように入店してみよう。
どこか暖かみのある空間にほっとする
とんかつ まるやは、東京都港区の新橋駅前ビル1号館にて2005年に創業した。それが、現在の新橋駅前本店である。
当時、汐留界隈の再開発により一気に増えた昼間人口だが、低価格で楽しめるようなとんかつ屋はあまりなく、渡りに船のような存在だったまるやは一気に人気店となり、2006年には有限会社まるやジャパンとして法人化。
その後も東京のオフィス街を中心に店舗を展開し、立ち飲み形式、居酒屋形式などのバリエーションも含めると、2023年6月現在、東京に23店舗で運営されている。
個人的にも、2006年頃は勤めていた会社のオフィスが汐留にあったので、まるやには頻繁に通った。
新橋駅を挟んだ汐留側には、手頃な価格でランチが楽しめる店はそれほど多くないので、貴重な存在だった。
今回の取材で久しぶりに訪ねることになったのだが、あの当時と寸分変わらない雰囲気と味に感激してしまった。
そんな東京のナイスとんかつ屋、まるやである。
テーブルに置かれた「昼のおしながき」。
このご時世にもかかわらず、ロースカツ定食が700円と、非常にお手頃な価格を維持している。
こちらは17時からのグランドメニュー。
なんとロースカツ定食はランチ時と同じ値段の700円と、ランチ時と価格が変わらない。
デラックスかつ定食などの、手間がかかるメニューが追加されている感じだ。
おすすめは「特ロース定食」ということで、今回は「特ロース定食」をオーダー!
昼時ということで、会社員たちで満席だ。
教科書のようなとんかつ、それは東京のスタンダード
しばらくして運ばれてきた「特ロース定食」!
オーソドックスでオーセンティックなとんかつである。
1000円というリーズナブルな価格にもかかわらず、肉にはしっかりと厚みがある。
そしてキャベツも新鮮でシャキシャキとしている。
タレを少しずつかけて、確かめるように食べていく。
豚肉の脂身にあるほのかな甘味がたまらない。
カジュアルなとんかつなのに、とてもホッコリとしてしまう。
お漬物も、味のアクセントとして重要なアイテムだ。
赤だしで、しっぽりと〆る。
「特ロース定食」というシンプルな定食にもかかわらず、他に何もいらない完璧な世界観。
それを1000円という価格で提供する、まるや。
私が汐留で働いていたころはまだ新橋駅前本店の1店舗のみだったが、いつのまにかたくさんの店舗になった。
地味だけど実直で、何より美味しく、お客さん想いのサービスは、1号店しかなかった当時から強く感じていたが、現在でも貫かれていることに感動した。
そんなとんかつまるやである。