炭鉱の街・筑豊で愛されたラーメン
福岡県を中心に九州全体に出店し、本州は東京や福島県にまで店舗を展開する「筑豊ラーメン山小屋」。
その本店は、その名の通り筑豊エリアである福岡県田川郡香春町にある。
国道201号線沿いに現れる、大きな店舗に広い駐車場。これが「筑豊ラーメン山小屋 香春本店」だ。
その存在感に圧倒される。
ラーメンか?焼肉か?それとも両方?
なんと言っても入り口が「焼肉」と「ラーメン」とに分かれているのだ。
今日は焼肉気分だな…という時は左側の焼肉入り口を、今日はラーメンかもな…という時は右側のラーメン入り口を使うと良いのである。
ちなみに中では繋がっているので、気が変わっても大丈夫だ。
焼肉入り口の横にはこんな看板がある。ラーメンと言いつつも、焼肉の押しの強さはなかなかだ。
筑豊ラーメン山小屋の歴史
筑豊ラーメン山小屋は、1970年、それまでトラック運転手であった緒方正年氏が創業したラーメン店である。
当初は「ラーメンセンター山小屋」という名前であり、焼肉店でもあった。
屋号でもある「山小屋」は、学校の廃材などを使って建てたことや、丘の上のような所にあって、「まるで山小屋のようだな」と言われた所から名付けたのだという。
緒方正年氏のラーメン作りは数々の伝説を残しているが、他店舗の研究のためにゴミ箱をあさり、どんな素材を使っているのか?まで調べたというのは有名なエピソードだろう。
現在は緒方正年氏の息子である緒方正憲氏が代表を勤める株式会社ワイエスフードにより運営されている。
ここ、香春本店は元々は創業の地にあったものだが、2006年に道路拡張に伴って現在の場所にて移転・新築されたものである。
その後、創業の地には「香春創業店」があったが、2018年に創業の地の付近にある道の駅・香春に「筑豊ラーメン山小屋 創業店」として移転・リニューアルしている。
2018年8月現在、「山小屋」ブランドの店舗は九州を中心に全国89店舗、姉妹店の「ばさらか」や「一康流ラーメン」も加えると107店舗で運営されている。また、海外にも40店舗ほどがある。
入り口には、九州ラーメン研究会の原代表による「筑豊ラーメン賛歌」が掲げられている。
豚骨ラーメンは博多・長浜ラーメンと、久留米ラーメン。そこに筑豊ラーメンも加わるべきだという熱い内容のものだ。
1970年に筑豊で誕生した山小屋。炭鉱の街であり、五木寛之「青春の門」の筑豊から生まれたオリジナルのラーメンである。
焼肉フロアとは行き来可能
店内は、ラーメン入り口からの方はカウンター席が中心となっている。
焼肉入り口の方のフロアとはこのように繋がっている。
焼肉の方のフロアはボックス席が中心で、テーブルには焼肉用のコンロが用意されている。
もちろん焼肉のテーブルでもラーメンを注文することは可能だ。
焼肉と何かのハイブリッド…福岡… として想像したのは、かつて北九州市に存在した「ロイヤルホスト」の1号店である。
そしてそれは川崎にある「元祖ニュータンタンメン本舗」の本店もそうである。
筑豊は炭鉱、北九州は製鉄、川崎は工業地帯と、働く男たちのエリアでは焼肉の需要が高いのかも知れない。
焼肉のフロアには個室もある。
焼肉側の入り口には、かなりたくさんのサインが飾られている。
とりわけ関取のサインや相撲関係のものが多く飾られている。
右側の方が創業者である緒方正年氏だ。
哀川翔・ますだおかだ出演の映画「デコトラの鷲5」のロケも、この本店で行われたようである。
鹿児島黒牛の提供品質に冠するトロフィーが飾られている。
九州筑豊流 スープ製法の五ヶ条とは
のれんには、「九州筑豊流 スープ製法の五ヶ条」である。
1.そげなもんいらんいらん!
2.アクは取っても旨みはとらん!
3.匂いはあってもあたりまえ
4.火加減が大事ちゃ
5.スープは生きちょう
スープに掛けてきた緒方氏ならではののれんである。
カウンターからの厨房の様子。
今回はお盆期間ということもあり、限定メニューで営業中であった。
ここではベーシックな「ラーメン」をオーダー。630円である。
豚骨の香り立つラーメン!
そして運ばれてきた、筑豊ラーメン山小屋 香春本店の「ラーメン」!
豚骨の独特な匂いに、食欲が早速反応する。
きくらげがたっぷりと入っている!
チャーシューは柔らかく、すぐにトロトロになって砕けるほどだ。
麺は細麺のストレート、まさに本場の豚骨ラーメンといったものだ。
スープにまろやかなコクと濃厚な旨みがあり、これぞ豚骨ラーメンのお手本と言いたくなるほど美味かった。
そこに麺を絡ませて食べ、時折柔らかいチャーシューも口に入れる。
まさに至福の時間…!
筑豊で生まれた「筑豊ラーメン山小屋」。その本店で食べる伝統のラーメン。
まさに本店巡礼に相応しい旅であった。