ひとつの歴史を作った象徴的なレストラン「アンミラ」
「アンナミラーズ」は、平成初期において最もアイコニックだったレストランのひとつだろう。
最盛期には28店舗ものチェーン展開を行っていたが、2022年8月現在、「高輪店」を残すのみとなり、それも8月末での閉店がアナウンスされている。
※追記:2022年8/31にて閉店しました。
品川駅高輪口を出てすぐにある、ウィング高輪WEST。
アンナミラーズ 高輪店はここに入居している。
マクドナルドの上にあるのが、アンナミラーズ 高輪店だ。
アンナミラーズ 高輪店は、2階にある。
閉店がアナウンスされてからは連日長蛇の列となっている。
9時オープンだが、朝6:45頃には並びはじめた。
看板に「Breakfast Lunch Dinner」とあるように、朝から夜まで時間ごとに様々なメニューが用意されている様子が写真で表現されている。
モーニングセットは、トーストやパンケーキがメインだ。
ランチとなるとハンバーグやサンドウィッチ、パスタなどが登場する。
ディナーは豪華にステーキだ。
閉店がアナウンスされてから長蛇の列になっているため、整理券が配布されている。
オープン直後で105組の待ち組数があった。
それではアンナミラーズ 高輪店に入店してみたい。
ペンシルバニア・ダッチスタイルの料理で豊かな時間を
アンナミラーズは、1973年にアメリカ西海岸と、ハワイ州にて創業したレストランだ。
創業者であるスタンレー・ミラー氏は、ドイツからアメリカに移民したペンシルベニア・ダッチの子孫で、祖母であるアンナ・ミラー氏が作っていた料理を提供するお店というコンセプトで、店名にも祖母の名前を冠した。
提供する料理は、ドイツ料理とアメリカ料理の融合というスタイルである。
日本ではアメリカでの創業と同じ1973年に甘味や肉まんで知られる井村屋グループが営業のライセンスを取得し、同1973年6月に東京・青山に1号店をオープンさせたのがその始まりである。
日本では1970年の大阪万博を機に、外食(洋食)ビッグバンが巻き起こり、マクドナルド、すかいらーく、ドムドムハンバーガー、モスバーガーといった数多くのレストランやハンバーガーチェーン店がオープンした。
井村屋の初代社長であった井村二郎氏はアメリカに外食産業の視察に向かい、そこで出会ったのがアンナミラーズだったことが、井村屋のライセンス取得に繋がった。
1980年代末から1990年代後半までが最盛期となり、最大で28店舗もの店舗数を持つに至ったが、値上げに伴う人気低下で少しずつ店舗を減らしていく。2012年の横浜ランドマークプラザ閉店を皮切りに、最後の1店舗である高輪店だけで10年間運営され、それも2022年8月末で閉店となり、日本から完全に姿を消す。
しかしながらハワイ州の店舗や、井村屋グループが運営する中国の店舗は残っており、日本の店舗についても撤退ではないとのことで、今後の復活に期待しよう。
店内はゆったりとした作りで、大きなガラスからは品川駅が一望できる。
入口に飾られている、アンナミラーズ創業者 スタンレー・ミラー氏の写真。
直筆サイン入りだ。
ハワイ店の写真も。
雑誌記事も飾られている。
メイド風のユニフォームも、アンナミラーズの大きな特徴の一つだ。
その後のメイドカフェなどに大きな影響を与えた。
このユニフォームに憧れてアンナミラーズで働き、その後芸能界デビューをした方も多い。
アンナミラーズオリジナルのマグカップ。こちらは販売もされている。
厨房はガラス面から調理の様子を見ることができる。
こちらはパイの厨房だろうか。
AUNTY MILLER’S KITCHENと書かれているメインキッチン。
AUNTY MILLERとは誰だろう?
ブレックファストとホームメイドパイのメニュー。
アメリカンで高カロリーなブレックファストメニューに食欲をそそられる。
今回は「ファーマーズブレックファスト」をオーダー!
スクランブルエッグ、スパムをチョイス。
もう1枚のシートにはアンナミラーズ49周年のおすすめ情報など。
主要なアンナミラーズ店舗の年表が記載されている。
全ショップのオープン年とクローズ年が記載された卓上ポップ。
各店舗の詳細なオープン・クローズ年を教えてくれるチェーン店は他に見当たらない。それだけ、アンナミラーズが自らの歴史を大切にしているということだろう。
朝からリッチな気分!アンナミラーズのモーニングセット
しばらくして運ばれてきた、「ファーマーズブレックファスト」のセット!
なかなかこんな派手なモーニングセットを食べることもないので心躍る。
トーストは薄めで、予め軽くバターが塗られている。
スクランブルエッグとスパム。
スパムが塩味がビシッと効いている。
スクランブルエッグやトーストには、ケチャップやジャムが用意されている。
ドリンク付きなので、アイスコーヒーをオーダー。
品川駅を見ながら食べることができる、絶景のレストランだ。
パンケーキに、ハチミツを垂らす。
モチモチとした食感のパンケーキだ。
こちらはパンケーキ用のクリーム。
ファーマーズブレックファストはなかなかのボリューム感があるので、これだけでお腹は満たされるだろう。
そして、アンナミラーズ名物のパイを!
アンナミラーズといえば、手作りのオリジナルパイが人気だ。
多くの種類がラインナップしている。
今回は、アイスクリームとホットパイのセット「ホットパイ・アラモード」の、アップルパイのセット「アップルパイ・アラモード」をオーダー!
なお、アンナミラーズのパイは、10時からと18時からの1日2回のみ販売される。
いずれも売り切れるので、パイを食べたい場合は10時以前か、18時以前かに入店しておく必要がありそうだ。
そして運ばれてきた「アップルパイ・アラモード」!
アップルの果実がゴロゴロと入った、肉厚のパイだ。
パイ生地は柔らかすぎず、しかし硬すぎず。
とても心地良く、サクサクと食べることができる。
これぞお店で作られてすぐに食べるという、最良な状態のパイではないだろうか。
このパイを目当てに多くの人が並ぶのも、納得が行く。
まさに完璧なパイである。
アラモードにはアイスクリームが付いてくる。
こちらもパイとの相性が抜群で、熱いパイと冷たいアイスクリームを交互に食べるのは、とても贅沢な時間だ。
間違いなく一つの時代、文化を創ったレストラン、アンナミラーズ。
東京を中心とした出店から、アンナミラーズ=東京というイメージを持っていたが、まさにイメージそのままであった。
一歩店内に入ると、外の喧噪を忘れるかのような、ゆっくりとした時間が流れている。
そして、丁寧で豪華なメニューの数々。
かつての日本が憧れた「アメリカ」を丁寧に運び込み、その伝統を実直に守り通す、いたって生真面目なレストラン。
そんなアンナミラーズ、またどこかで復活しないかと期待をしている。
それまで、しばしのお別れだ。